有料版の DeepL Pro が、2020年6月16日に日本でサービスを開始しましたが、導入されている方も多いのではないでしょうか。
ところで、CATツール『MEMSOURCE』のサイトに、DeepLに関する記事が掲載されています。『DeepLをMemsourceで活用し翻訳作業を効率化 』という記事ですが、この中の「4. DeepL の翻訳は文脈を参照するため分節の単位に注意する」という節があり、翻訳対象のセンテンスだけではなく、その前後のセンテンスまで参照した上で訳文を出力しているとのこと(文脈を読み取っているわけではない)。
つまり、DeepLで訳文を出力するときは、センテンス単位で出力する場合と、パラグラフ単位で出力する場合とでは、訳質に変化が生じるということだそうです。そして、一般的に、センテンス単位でDeepL翻訳すると、前後のセンテンスを参照しないため、翻訳品質が劣化してしまうとのことです。
通常、CATツールに原文を取り込む時には、センテンス単位で取り込んでいることと思います。そのため、DeepLをAPI等を使ってCATツールに組み込んで使用するときには、パラグラフ単位でDeepLで翻訳した場合と、訳文が異なる可能性があることに留意する必要がありそうです。
そこで、実際に訳文が変化するかどうかを特許明細書を用いて試してみました。US9097577(公開訳:特表2014-521991)の一部分を、センテンス毎に分けたものと、それらを全て合わせたものをDeepL翻訳してみました。
カッコが公開訳、赤文字がDeepLのセンテンス単位とパラグラフ単位で異なる部分、イタリックが公開訳と異なる部分となります。
では見ていきましょう。
The present invention generally relates to plasma based light sources, and more particularly to the use of adaptive optics to correct for aberrations in laser-sustained plasma cells.
(本発明は、一般的にプラズマベースの光源に関するものであり、より詳細には、レーザー持続プラズマセルにおける収差を修正するための適応光学系の使用に関するものである。)
『DeepLセンテンス単位』
本発明は、一般に、プラズマベースの光源に関するものであり、より詳細には、レーザー照射されたプラズマセルにおける収差を補正するための適応光学系の使用に関するものである。
『DeepLパラグラフ単位』
本発明は、一般に、プラズマベースの光源に関し、より詳細には、レーザー照射されたプラズマセルにおける収差を補正するための適応光学系の使用に関する。
As the demand for integrated circuits having ever-smaller device features continues to increase, the need for improved illumination sources used for inspection of these ever-shrinking devices continues to grow.
(常に小さい装置特徴を有する集積回路に対する需要が増大し続けていることに伴い、これらの常に縮小する装置の検査に用いるための改善された照明光源に対する要求が増し続けている。)
『DeepLセンテンス単位』
これまで以上に小型化されたデバイスの特徴を持つ集積回路への需要が高まるにつれ、これらの小型化されたデバイスの検査に使用される照明光源の改善の必要性が高まっています。
『DeepLパラグラフ単位』
絶えず小さくなったデバイスの特徴を有する集積回路に対する需要が増加し続けるにつれて、これらのますます小さくなったデバイスの検査に使用される改良された照明光源に対する必要性が増大し続けている。
One such illumination source includes a laser-sustained plasma source.
(そのような照明光源の一つに、レーザー持続プラズマ源がある。)
『DeepLセンテンス単位』
このような照明源の一つには、レーザ照射型プラズマ源が含まれる。
『DeepLパラグラフ単位』
このような照明光源の一つとして、レーザ励起プラズマ光源があります。
Laser-sustained plasma light sources are capable of producing high-power broadband light.
(レーザー持続プラズマ光源は、高出力広帯域光を発生する能力がある。)
『DeepLセンテンス単位』
レーザー維持型プラズマ光源は、高出力の広帯域光を発生させることができます。
『DeepLパラグラフ単位』
レーザ励起プラズマ光源は、高出力の広帯域光を発生させることができます。
Laser-sustained light sources operate by focusing laser radiation into a gas volume in order to excite the gas, such as argon or xenon, into a plasma state, which is capable of emitting light.
(レーザー持続光源は、レーザー光線の焦点をガス体積に合わせることによって、ガス、例えば、アルゴンまたはキセノンを、光を放出する能力があるプラズマ状態に励起するように作用する。)
『DeepLセンテンス単位』
レーザー維持光源は、アルゴンやキセノンなどのガスを励起して発光可能なプラズマ状態にするために、レーザー光をガス中に集光して動作します。
『DeepLパラグラフ単位』
レーザ励起プラズマ光源は、アルゴンやキセノンなどのガスを励起して発光可能なプラズマ状態にするために、レーザ光をガス体積内に集光して動作します。
This effect is typically referred to as “pumping” the plasma.
(この効果は、通常、プラズマの「ポンピング」と呼ばれる。)
『DeepLセンテンス単位』
この効果は、典型的にはプラズマの「ポンピング」と呼ばれています。
『DeepLパラグラフ単位』
この効果は、一般的にプラズマを「ポンピング」と呼ばれています。
The shape of a given plasma is, in part, defined by the laser light intensity distribution near the laser focus.
(所与のプラズマ形状は、レーザー焦点付近のレーザー光強度分布によってある程度確定される。)
『DeepLセンテンス単位』
所与のプラズマの形状は、部分的には、レーザー焦点付近のレーザー光強度分布によって定義されます。
『DeepLパラグラフ単位』
所定のプラズマの形状は、部分的には、レーザー焦点付近のレーザー光強度分布によって定義されます。
Optical aberrations may impact the quality of laser focus and generally limit the predictability of the resulting plasma shape.
(光学収差がレーザー焦点の質に影響を及ぼす結果として生じるプラズマ形状の予測の可能性が制限される。)
『DeepLセンテンス単位』
光学収差は、レーザー焦点の品質に影響を与え、一般的には結果として得られるプラズマ形状の予測可能性を制限する可能性があります。
『DeepLパラグラフ単位』
光学収差は、レーザー焦点の品質に影響を与え、一般に、結果として得られるプラズマ形状の予測可能性を制限する可能性がある。
In a general sense, any intervening medium may produce optical aberrations in the laser light focused into the bulb of the plasma cell.
(概略の意味では、任意の介在媒体によって、プラズマセルのバルブに焦点が合わされたレーザー光の光学収差を発生することがある。)
『DeepLセンテンス単位』
一般的な意味では、任意の介在媒体は、プラズマセルのバルブに集光されたレーザ光に光学収差を生じさせることができる。
『DeepLパラグラフ単位』
一般的な意味では、任意の介在媒体は、プラズマセルのバルブに集光されたレーザー光に光学収差を生じさせる可能性がある。
For example, imperfections in any of the optical elements of an optical pathway used to generate the plasma may produce aberrations in the light.
(例として、プラズマ生成に用いる光学経路におけるいずれかの光学部品の欠陥によって、光の収差が発生することがある。)
『DeepLセンテンス単位』
例えば、プラズマを生成するために使用される光路の光学素子のいずれかの不完全性は、光の収差を生じさせる可能性がある。
『DeepLパラグラフ単位』
例えば、プラズマを生成するために使用される光路の光学要素のいずれかの不完全性は、光の収差を生じさせ得る。
In order to contain the gas used to generate the plasma, an implementing plasma cell requires a “bulb,” which is configured to contain the gas species as well as the generated plasma.
(プラズマ生成に用いるガスを収容するために、実施に用いるプラズマセルには、生成したプラズマに加えてガス種類も収容するように構成された「バルブ」が必要となる。)
『DeepLセンテンス単位』
プラズマを生成するために使用されるガスを封じ込めるために、実施形態のプラズマセルは、生成されたプラズマと同様にガス種を封じ込めるように構成された「バルブ」を必要とする。
『DeepLパラグラフ単位』
プラズマを生成するために使用されるガスを封じ込めるために、実施形態のプラズマセルは、生成されたプラズマと同様にガス種を封じ込めるように構成された「バルブ」を必要とする。
The bulb of the plasma cell itself serves as a major source of optical aberration in a laser-sustained plasma light source.
(プラズマセルのバルブは、それ自体が、レーザー持続プラズマ光源における光学収差の主な原因となる。)
『DeepLセンテンス単位』
プラズマセルのバルブ自体が、レーザー照射型プラズマ光源における光収差の主な発生源として機能している。
『DeepLパラグラフ単位』
プラズマセルのバルブ自体が、レーザー光を利用したプラズマ光源における光学収差の主な原因となります。
The production of optical aberrations in laser-sustained plasma light sources results in larger than desired plasma volumes as well as a lack of an ability to control the bulb envelope.
(レーザー持続プラズマ光源において光学収差が発生すると、バルブの覆いを制御する能力の欠如に加えてプラズマ体積が所望よりも大きくなる。)
『DeepLセンテンス単位』
レーザー維持型プラズマ光源における光学収差の発生は、所望のプラズマ体積よりも大きくなるだけでなく、バルブエンベロープを制御する能力の欠如をもたらします。
『DeepLパラグラフ単位』
レーザー維持型プラズマ光源における光学収差の発生は、所望のプラズマ体積よりも大きくなるだけでなく、バルブエンベロープを制御する能力の欠如につながります。
This lack of control in turn leads to irreproducible plasma shapes.
(この制御の欠如は、転じて、再生不可能なプラズマ形状をもたらす。)
『DeepLセンテンス単位』
このような制御の欠如は、再生不可能なプラズマ形状を引き起こすことになります。
『DeepLパラグラフ単位』
この制御能力の欠如は、再現性のないプラズマ形状につながります。
Commonly bulb aberrations are controlled by manufacturing bulbs with minimized bulb aberration.
(一般に、バルブ収差を制御するために、最小限のバルブ収差を持つバルブを製造する。)
『DeepLセンテンス単位』
一般的には、電球収差を最小限に抑えた電球を製造することで、電球収差を抑制しています。
『DeepLパラグラフ単位』
一般的に、バルブ収差は、最小化されたバルブ収差を有するバルブを製造することによって制御される。
FIGS. 1A through 1C illustrate a series of plasma shapes generated utilizing different bulb shapes, with varying levels of optical aberration.
(図1A~図1Cに、種々のバルブ形状の利用によって生成された、さまざまレベルの光学収差を持つ一連のプラズマ形状を例証する。)
『DeepLセンテンス単位』
図1A〜1Cは、異なるバルブ形状を利用して生成された一連のプラズマ形状を、光学収差のレベルを変化させながら図示している。
『DeepLパラグラフ単位』
図1A〜1Cは、様々なレベルの光学収差を有する異なるバルブ形状を利用して生成された一連のプラズマ形状を示す。
FIG. 1A depicts a plasma shape generated by a “football” shaped bulb, while FIG. 1B depicts a plasma shape generated by a spherical bulb.
(図1Aに、「フットボール」状のバルブによって生成されたプラズマ形状を描写し、一方、図1Bに、球状のバルブによって生成されたプラズマ形状を描写する。)
『DeepLセンテンス単位』
図1Aは、「フットボール」形状の電球によって生成されたプラズマ形状を示し、図1Bは、球状の電球によって生成されたプラズマ形状を示す。
『DeepLパラグラフ単位』
図1Aは、「フットボール」形状のバルブによって生成されたプラズマ形状を示し、図1Bは、球形バルブによって生成されたプラズマ形状を示しています。
FIG. 1C illustrates the smallest and brightest of the plasmas.
(図1Cに、最も小さくかつ最も明るいプラズマを例証する。)
『DeepLセンテンス単位』
図1Cは、プラズマの中で最も小さく、最も明るいプラズマを示している。
『DeepLパラグラフ単位』
FIG 1Cは、プラズマの中で最も小さく、最も明るいプラズマを示しています。
The plasma in FIG. 1C was generated using a cylindrical shaped bulb and possessed the smallest amount of aberrations of the FIGS. 1A-1C.
(図1Cのプラズマは、円筒状のバルブを用いて生成されたものであり、図1A~図1Cのうち収差は最小量であった。)
『DeepLセンテンス単位』
図1Cのプラズマは、円筒形のバルブを用いて生成され、図1A〜1Cの中で最も少ない収差量を有していた。
『DeepLパラグラフ単位』
図1Cのプラズマは、円筒形の電球を使用して生成され、図1A〜1Cの中で最も小さい収差量を持っていました。
Relying on the minimization of aberrations based on medium selection is limited.
(媒体の選択に頼る収差の最小化は限定的である。)
『DeepLセンテンス単位』
媒体選択に基づく収差の最小化に頼るのは限界があります。
『DeepLパラグラフ単位』
媒体の選択に基づく収差の最小化に頼るのは限界がある。
In a practical sense, aberrations cannot be entirely avoided.
(実際には、収差は完全には回避することはできない。)
『DeepLセンテンス単位』
現実的な意味で、収差を完全に回避することはできません。
『DeepLパラグラフ単位』
現実的な意味で、収差を完全に回避することはできない。
Further, the selection of an aberration minimizing bulb provides no mitigation to aberrations generated by additional elements of the plasma light source or aberrations caused by convection within the plasma light source.
(さらに、収差を最小化するためのバルブの選択では、プラズマ光源の追加要素によって生成された収差、またはプラズマ光源内部の対流に起因する収差は軽減できない。)
『DeepLセンテンス単位』
さらに、収差最小化バルブの選択は、プラズマ光源の追加要素によって発生する収差や、プラズマ光源内の対流によって発生する収差を緩和するものではない。
『DeepLパラグラフ単位』
さらに、収差最小化バルブの選択は、プラズマ光源の追加要素によって発生する収差、またはプラズマ光源内の対流によって発生する収差に対する緩和を提供しない。
Therefore, it would be desirable to provide a system and method for correcting aberrations in a laser-sustained plasma light source that corrects the deficiencies identified in the prior art.
(それ故に、先行技術に特定された欠陥を修正する、レーザー持続プラズマ光源における収差を修正するためのシステムおよび方法の提供が望ましいであろう。)
『DeepLセンテンス単位』
したがって、先行技術で特定された欠陥を補正する、レーザー維持プラズマ光源における収差を補正するためのシステムおよび方法を提供することが望ましいであろう。
『DeepLパラグラフ単位』
したがって、先行技術で特定された欠陥を補正する、レーザー維持プラズマ光源内の収差を補正するためのシステムおよび方法を提供することが望ましいであろう。
以上。
このように、センテンス単位と、パラグラフ単位とでは、生成されるほとんどの訳文で違いが見られ、訳文が同一であったものはごく一部のみでした。そして、パラグラフ単位では翻訳精度が向上すると思われましたが、今回に限って言えば、精度の向上はほとんどなかったように思えます。
何にせよ、訳質が変化することは間違いないようです。DeepLを使用するときはご留意下さい。
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